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きたひろエコ・ミュージアム 令和元年5月

印刷用ページを表示する更新日:2019年7月17日更新

花夏の始まり、変わらぬ色 カキツバタ

「からころも〜」と伊勢物語で詠われたように、古くから愛でられていた花なのでしょう。小満のころはブナやコナラの緑が萌え、寂しかった湿原も彩りを取り戻します。カキツバタは、この初夏の鮮やかな新緑の中、一斉に開花します。

八幡湿原のカキツバタが有名になったのは、なにも最近のことではありません。昭和12年には八幡地区の自生地が「アヤメ池湿原」として広島県の天然記念物に指定されました。当時は至る所に自生のカキツバタが見られたようで、『芸北、カメラが語る昭和初期(芸北町教育委員会)』に収められている写真からもその様子を伺い知ることができます。日本の近代植物学の祖とも言える牧野富太郎が調査のために八幡を訪れた際、白いシャツに花弁をこすりつけて喜んだという逸話も納得がいくものです。

今日も多くの人がカキツバタの群生を見に八幡を訪れます。しかし、私たちが目にするカキツバタは牧野先生が見たカキツバタとは少し違うのかもしれません。天然記念物に指定されたアヤメ池湿原は水田開発のために消失し、八幡高原一帯は圃場整備のために地下水位が低下して、湿原がことごとく失われてしまったからです。本来の自生地は、八幡高原の中でもわずかに残されているだけです。

今、八幡地区では湿原を守るための様々な取り組みが進んでいます。牧野先生の詠んだ「衣にすりし、昔の里か燕子花」という句が色褪せないよう、広島県唯一のカキツバタ自生地を残していきたいものです。

牧野博士の句が書かれた石碑

高原からの花だより No.4
広報きたひろしま 平成17年6月号掲載

 

芸北トレッキングガイドさんの花話

今日は、八幡のカキツバタについてお話します。

八幡のカキツバタは最近になって非常に関心が高くなっていますけれども、ぼくたちが子どものころはカキツバタだけでなく、これによく似た花で、アヤメやハナショウブがこの時期は順番に咲きますので、ぼくたちはこれを全部アヤメと呼んでいました。そして「アヤメが咲く時期が来たんだなぁ」という思いしかありませんでした。

カキツバタは、僕が子どものころにはどこにでもある花でした。川の土手であるとか田んぼの畔とかにいっぱい咲いていました。

このカキツバタは、高知出身の世界的な植物学者、牧野富太郎博士が八幡のカキツバタに感激されたことから、高知県越知町との交流が始まり、それをきっかけに「これがカキツバタなんだなぁ」、「これがアヤメなんだなぁ」「これがハナショウブなんだぁ」と区別して見るようになりました。(旧芸北町と高知県越知町は平成11年頃から交流を始めて友好を深めている)  

昔はたくさんあったカキツバタが、だんだんと少なくなっていくのはやっぱりさみしいなぁという思いをしながら、越知町のみなさんと一緒になってこれを保存していこうと、いろいろなみなさんと一緒にカキツバタを守っています。

カキツバタはこれから5月中旬から6月にかけて梅雨時期がいちばんきれいなのではと思います。ぜひみなさんおそろいでこの美しい立ち姿を見に来てほしいと思います。

八幡のカキツバタ

≪問い合わせ先≫
北広島町観光協会 芸北支部 芸北トレッキングガイドの会
電話 0826-35-0888


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