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きたひろエコ・ミュージアム 令和元年11月

印刷用ページを表示する更新日:2020年5月7日更新

高原を彩る黄葉 コナラ

晴れた朝の冷たく澄んだ空気が、すぐそこまで冬が近づいたことを教えてくれます。霜降を過ぎた八幡高原の山肌は、その寒さに抗うように、黄色や橙の暖かな色に染まっていきます。もみじといえばカエデの仲間がすぐに思い出されますが、ここではコナラがその主役です。
コナラは、かつて炭の材料や薪としてさかんに使われた落葉広葉樹です。伐採しても、そこから数本の芽が萌えて出て生長するので、炭を作るのにちょうど良い大きさに生長するまで待っては、繰り返し伐採して使われました。「まき」と呼ばれるのもこのためです。その他シイタケの原木としても使われるなど、里山を代表する重要な樹木でした。20m以上の高木になりますが、八幡高原ではそこまで大きな個体は見られません。それは、八幡高原のコナラ林は里山としての利用を止めてから出来上がった若い林だからでしょう。
幹には縦に裂け目があり、裂け目の黒っぽい色と残った皮の白い色が縦向きの帯模様を作るので、慣れれば冬でも簡単に見分けることができます。花は春の芽生えと同時に咲きますが、花粉が風で運ばれる風媒花なので、一つ一つは目立ちませんが、若葉の色や花の黄緑色は独特で、花の時期には山全体が萌葱色に染まります。雌花が受粉するとその年のうちに小さなどんぐりを作り、そのどんぐりは葉が色づく前には落ちます。コナラの葉は橙色に黄葉するものが多いのですが、切られた後に芽生えたものや林縁などでは真っ赤になっている葉も見られます。
八幡に住むようになって気づいたのですが、一年に一日だけ、もみじに染まった山肌がひときわ輝く日があります。毎日、季節は次第に変化しているように見えても、その一日だけは、風景がはっきりと違って見えるのです。今日が「その日」だと気づいた日には、一日中、美しい秋の直中に居る幸福に包まれます。それは、蝋燭が消える直前に見せる明るさのように、冬に向けて、季節が彩りを失うために必要なことのようにも感じられます。

コナラの画像

高原からの花だより No.33
広報きたひろしま 平成19年11月号掲載

 

芸北トレッキングガイドさんの花話

コナラはこの地方では古くから私たちの生活に最も身近で最も大切で、われわれの生活を支えてくれた樹木です。コナラは燃料としてとても適しているため江戸の頃よりこの地方の大きな産業であった「たたら産業」を支えてきて、日本有数の鉄の産地にしました。
たたら産業が終わっても産業用・家庭用の燃料として、またシイタケの原木として広島近郊・九州方面に出荷されました。しかし原油の輸入が始まりだんだんとその役目が終わり、今では薪・炭の生産で生活する人はほとんどいなくなりました。
その後は、紙の原料となり新聞・本・ノート・ティッシュペーパー等生活になくてはならないものになりました。ここでもコナラは品質コスト面に最良とされ重宝されました。しかし近年のパソコン等の普及により紙の使用が減少し山林、林木等の価値が大きく後退し現在に至っています。
コナラには秋に花の後ドングリができます。このドングリを実際に食べた人がいます。「味はどんなかった?」ときいたら「あんまりうもうなぁ」ということでした。さらに昔は米の不作の時には米と一緒に炊いて食べたような話を聞きました。
いずれにしてもコナラは私たちの生活を支えてくれた大切な木です。これからもコナラの利活用によって地域の発展をみんなで成し遂げたいものです。

 

≪問い合わせ先≫
北広島町観光協会 芸北支部 芸北トレッキングガイドの会
電話 0826-35-0888


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