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きたひろエコ・ミュージアム 令和2年9月

印刷用ページを表示する更新日:2020年10月28日更新

やうやう涼しい季節に誘う アケボノソウ

始まりも終わりもなく巡る季節の中にあっても、処暑を迎えると、なんとなく折り返しにたどり着いた気がします。草木の営みに同調するようなこの感覚は、稲作文化が育てたものでしょうか。多くの花と同じように、アケボノソウもまた、実りへの準備を始めます。

アケボノソウ
アケボノソウは高さ1メートルほどになる2年草です。やや湿った環境を好むようで、湿地のまわりや谷の疎林内で見かけます。センブリの仲間なので、芽生えた年には花を付けずに根生葉だけで過ごし、翌年に花を咲かせます。混生葉のときにも、茎に付く葉と同じように3つの葉脈が目立つので、慣れると1年目の株でも見分けることができます。
花の形もセンブリによく似ています。5枚の花弁があるように見えますが、付け根部分では全て1つにつながっています。花弁の先端部分には黒紫色の斑点がたくさん鏤(ちりば)められています。夜が明けて朝を迎えるひととき、真っ暗な空がしだいに白くなっていく様を、小さな花弁の上に見出した古人の感性には感銘を覚えます。花弁の上に輝く星のように見える黄緑色の2つの点は、蜜を分泌する蜜腺溝です。雌しべから離れたところに蜜があるのは変わっていますが、秋には種を付けている個体をたくさん見るので、受粉は上手くいっているのでしょう。
姿が美しい花の常で、八幡高原を散策すると、切り取られたアケボノソウをしばしば目にします。アケボノソウは花を付けると枯れてしまうので、根を残しても、その株が育つことはありません。また、掘り起こして移植しても、その株は枯れるだけです。一度咲いて枯れる草花は、種を落としてはじめて命をつなぐことができるのです。野に咲く花を手元に置くような独りよがりの楽しみかたではなく、花の方に会いに来るようにすれば、その美しい姿をいつまでも見せてくれるのではないでしょうか。花を楽しむ感性と一緒に、そんなゆとりと優しさを持っておきたいと思います。

高原の花だよりNo.67
広報きたひろしま 平成22年9月号掲載

 

撮影を終えて

今回も芸北トレッキングガイドの方にお手伝いいただきました。

撮影のようす
そのガイドさんに教えてもらったことを二つ紹介します。
(1) 「アケボノソウの花びらは、通常は5枚ですが、中には4枚のものがあります。さらにごくごくまれに、6枚、7枚のものもあります。」
昔から四葉のクローバーを見つけると幸せが訪れるといいますから、5枚以外のアケボノソウも、見つけたら幸せが来るような気がしてきました。
写真の中にも、一つ(赤丸内)4枚花のアケボノソウが見えます。この写真を見た人にも幸せが訪れますように。

4枚花のアケボノソウ

(2) 「アケボノソウの花びらには、まるで目のような黄色い点が二つずつありますが、この黄色い点は、ここから蜜が出して昆虫をおびき寄せて、受粉するためです。」
花びらをアップして写してみたら、黄色い点の周りにはたくさんの蟻がうごめいていました。この蟻は蜜を吸っていたのですね。植物と昆虫の共生関係というものでしょうか.

アケボノソウとアリ

 

≪問い合わせ先≫
北広島町観光協会 芸北支部 芸北トレッキングガイドの会
電話 0826-35-0888


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