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きたひろエコ・ミュージアム 令和2年12月

印刷用ページを表示する更新日:2021年1月8日更新

冬のごちそう イヌザンショウ

イヌザンショウ

八幡高原には霜が降りるようになりました。葉を落としたり、冬芽を付けたり、種を播いたりと、植物はすっかり冬の仕度を調えたようです。そんな植物とは対照的に、緑が失せた八幡高原にやってくるのは冬鳥たちです。シベリアや北海道など、寒さがより厳しい地方から渡ってきた鳥たちにとって、植物の種は貴重な食料です。つやつやと黒く光るイヌザンショウの種も、ツグミやジョウビタキなどが好んで食べます。
イヌザンショウは、草原の中や道端など、開けた場所に生える落葉低木です。雌雄別株で、花は7月の終わり頃に咲きます。互生する複葉は、大きいものでは20cm程度になり、秋には黄葉して落ちます。
栽培され、料理に使われるサンショウも同じ仲間ですが、サンショウは刺が2つずつ対になって出ているのに対して、イヌザンショウでは1つずつが交互に出ていることで見分けることができます。また、葉の香りもサンショウに比べて弱く、ミカンを剥いたときに広がる匂いに近いような気がします。この匂いは葉の表面にある油点(ゆてん)から分泌されるもので、ミカン科の植物に共通の特徴です。「イヌ」と名前に付くのは、おそらくサンショウに比べて匂いが弱く、料理には使えないからでしょう。しかし、イヌザンショウの実や葉は咳止めの薬に使われたり、実から取れる油は灯や整髪に使われるなど、有用な植物だったようです。
イヌザンショウの黒くて固い実は、カンボクやノイバラなどの柔らかくて赤い実に比べて高い栄養価があります。だからといって、全ての冬鳥がイヌザンショウばかりを選り好んで食べていては、種は食べ尽くされてしまいます。そうなると、新しいイヌザンショウの芽生えはなくなるばかりでなく、鳥たちにとっても冬の食料がたちまち底をついてしまうことでしょう。多様な植物が多様な種をつけること、そして、それを食べる鳥の食性が多様なことが、長い冬を越す鳥たちの生活を支えているのです。

高原の花だよりNo.34
広報きたひろしま 平成19年12月号掲載

 

撮影を終えて

今回も芸北トレッキングガイドの方にお手伝いいただきました。

撮影は、令和2年12月21日月曜日、冬至の日でした。一年で一番太陽の高度が低い日です。先週より日本列島を襲っていた寒波により、撮影場所の八幡千町原は20cmくらいの積雪がありました。
この日はときおり日が射してきましたが、風が吹くとぶるぶるっと震えるほどの冷たい日でした。
解説は、いつものように芸北トレッキングガイドの方にお願いしました
さて今回取り上げた植物はイヌザンショウです。イヌツゲとかイヌガヤとか、イヌの付く植物は私たちの周りにたくさんあります。たいていの場合、本家に対して性質的にやや劣っているとか、役に立たないとかの侮蔑の意味が込められているようです。しかし、その評価基準は「人間にとって…」でして、一生懸命に生きている植物には何の責任もない話です。またイヌに対しても失礼な話です。
さてイヌザンショウです。本家のサンショウはピリリと辛く、独特の香りがして料理によく使われますが、イヌザンショウの方は、それほどの香りがなく料理に利用されることはありません。そのため「イヌ」がつくのですが、果皮は「崖椒(がいしょう)」と呼ばれる漢方薬だとか。人間に十分役立っているのに「イヌ」だなんて、冤罪です。それに、人間は食べないけれども(解説者は「試しに食べてみたら、炭のような味がして不味かった」と言っていました)、イヌザンショウの実は小鳥にとっては栄養満点の大好物食品だそうです。自然界はこうしてバランスがとれているのでしょう。
ところで、サンショウとイヌザンショウの違いは、香りと薬効だけでなく、トゲの付き方が違うそうです。つまり、サンショウのトゲは対生ですが、イヌザンショウの方は互生です。

イヌザンショウのトゲ
二枚目のイヌザンショウの写真を見てください。こんなふうに互い違いにトゲがついているのがイヌザンショウです。サンショウは同じ位置から右と左に出ます。今度サンショウを見られることがあったらぜひトゲの付き方を見てください。
撮影の合間にふと振り返りますと、コナラの木に以前取材したホソバヤドリギが満開に咲いています(?)。まるで「ヤドリギの木」のようです。

ヤドリギのようなイヌザンショウ
これはこれで美しいのですが、ヤドリギって動物で言えば寄生虫のようなものですよね。言い換えれば、これは寄生虫に全身の栄養分を吸い取られて苦しんでいる姿です。それを美しいなんて呑気なことを言ってはコナラの木に申し訳ないというものです。
しかし、一方でこのホソバヤドリギの実を楽しみに、シベリア辺りから食べにくるレンジャクという鳥もいるわけです。これもまた自然界のバランスというものでしょう。

 

≪問い合わせ先≫
北広島町観光協会 芸北支部 芸北トレッキングガイドの会
電話 0826-35-0888


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