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きたひろエコ・ミュージアム 令和3年5月

印刷用ページを表示する更新日:2021年6月14日更新

牛がつくる庭園 レンゲツツジ

レンゲツツジ

青葉の季節、八幡高原に薫る風を一番に感じていたのは牛たちだったに違いありません。今は森になってしまった掛頭山や聖山の山裾などには、かつては大きな草原があったそうです。草原では、春から秋にかけて草が刈られ、農業が忙しい時期には牛の放牧が行われていたそうです。若草が風になびく草原には、レンゲツツジが点々と咲きます。
ツツジの仲間では最も大きな花を付けるレンゲツツジは、その色も相まって、若葉の草原ではよく目立ちます。一つの枝にたくさんの花を付けるので、花が開く前には、とがった蕾が枝先に集まった様子が一つの大きな花のようにも見えます。レンゲツツジというのはこの時の様子を蓮華に見立てて付けられた名前です。コバノミツバツツジなど、里山に咲くツツジに比べて花が大きく、真っ赤なので、オニツツジという別名もあります。
レンゲツツジは放牧地などでしばしば大きな株をつくります。これは、花にも葉にも毒があるため、一度食べた家畜は二度とレンゲツツジを食べないからです。間違えて食べた家畜にとっては、鬼に襲われたような苦しみかもしれません。生長していくときに競争相手となる他の植物は家畜に食べられるので、牧場はレンゲツツジにとってたいへん生活しやすい環境なのです。
信州の高原には、庭園状群落と呼ばれる見事な群生が見られる場所もあります。八幡高原にも、少し前までは大きなレンゲツツジの株が点々と見られましたが、今ではずいぶん少なくなりました。その理由は牛が居なくなったことではなく、残念なことに、心ない人に持ち去られてしまったからです。
牧場でレンゲツツジが残ったのは、牛が食べないだけでなく、牧場主が刈らなかったからです。野の花を野に置くことも持ち去ることも、どちらも花を愛でる心が為したことです。ふたつの心は本当に同じなのでしょうか。偏った愛し方は、どこか怖ろしくも感じます。

高原の花だよりNo.39
広報きたひろしま 平成20年5月号掲載


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