シバ餅とは,カシワ餅のことです。
関東では柏の葉で包む柏餅が一般的ですが,関西では,入手しやすいシバの葉で包むのでシバモチといいます。
シバというのは,「サルトリイバラ」という茎にトゲのある植物の葉です。
サルトリイバラの語源について,牧野富太郎博士の『牧野日本植物図鑑』(昭和15年版)に,
「和名 猿捕いばらハ 刺アリテ猿之レニ引キ懸ル意ニテ云フ」
「牧野日本植物図鑑」(著者 牧野富太郎、発行社 株式会社北隆館)より引用
とあります。つまり,あのすばしっこいサルでも,このトゲに引っかかってしまうという意味からきています。
『広島県の植物方言と民俗』(渡辺泰邦著2007)という本によりますと,サルトリイバラは,地方によって,ずいぶんと呼び名の違う植物です。サンキライとかシバとか広島県内だけでも40種類以上の呼び名があります。
芸北地域においても,才乙ではタタラグイ,土橋ではタタラゴと呼んでいたそうです。もっとも,地元の何人かの人に聞いてみましたが,そんな呼び方はしないと言われたので,今は使われていないようです。
タタラゴイとかタタラゴといっても,古代製鉄のたたら製鉄とは関係ありません。
サルトリイバラのトゲが足に「カカル」ので,古い言い方で,「カカラ」とか「カタラ」とか呼んでいたようです。それが転じて「タタラ」になったというのが本当のようです。
このトゲが足に引っかかって歩きにくいことについて,芸北に次のような伝説が残っています。
入澤良枝 画
昔々,宮島の神さんが,阿佐山に来られた時に,サルトリイバラのトゲが足に絡んで歩くのに邪魔になって大変に困られたそうです。腹を立てた神さんは,阿佐山のサルトリイバラを全部引き抜いて,まとめて団子のように巻いてから阿佐山の下に蹴り落としたといいます。
そのために,今でも阿佐山にはサルトリイバラが一本もなく,蹴り落とされた側の,大朝の上ヶ原(うえんばら)と芸北の才乙(さいおと)には,このサルトリイバラが大変に多いということです。
もっともこの話,蹴り落とした主は,宮島の神さんであったり,弘法大師であったり,安徳天皇の乳母御前であったり,いろいろなバリエーションがあります。
サルトリイバラの茎にはたくさんのとげがありますが,葉が丈夫なこと,葉の表面は光沢があってもちがくっつきにくいこと,また葉の形も丸くてもちが包みやすいなどの理由でシバもちに利用されてきたのでしょう。
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