花田植をする地域
田植に関する行事は日本全国に存在します。国の文化財になっているものだけでも四十を超える数があり、周辺の同系統の行事や、かつて行われていたものを含めれば、それよりずっと多くなるはずです。
これらの行事を分類する方法はいくつか考えられますが、例えば行われる時期で見てみると、年初(正月・小正月)・田植時期・秋(収穫期)の大きく三つに分かれます。
この中で、東日本に多い年初や各地に分散している秋に行われるものは、季節的に田植の実作業を伴わず、舞やしぐさによるものが大半です。
西日本に多い田植時期の行事では田植が行われるものもありますが、「御田植(祭・神事)」として、神田などの特別に設けられた田で、寺社の祭として行われるものが多いようです。地元の人が実際の田で牛を使って代掻きをし、囃しと歌に合わせて田植をする行事は、中国山地だけに残る特徴的なものです。
この中国山地の田植行事は、大きくは西部の「花田植系(安芸系)」と、東部の「供養田植系(備後系)」とがあります。
大きな違いは、花田植が「サンバイ」と呼ばれる田の神を祀るのに対し、供養田植は大山の信仰が背景になっていることで、これにより行事や歌に違いが生じています。
ただし、花田植と供養田植には共通点もあり、二つの文化圏の間に位置する地域には複合的な形を持つ行事も存在します。
長い年月のうちに各々の良い部分を取り入れ合い、またその反対に地域の特性を出すことや、時代に応じた変更が加わることで、それぞれの姿になっているのでしょう。