花田植の名称
現在、「花田植」という名称がよく知られていますが、これはあまり古いものではありません。
「田植」は稲の苗を田に植えること全体を差します。その中で日常の仕事としての田植には、早い時期にできる稲の田植で、基本的に家族単位で作業する「早植(早稲植・わさ植)」や、大勢で協力する「組植(モヤイ植)」があり、囃しを伴うこともありました。
それに対し特別な行事としての田植には「大田植(大田)」と呼ばれる、大勢でする行事的な田植があり、近世・近代はこの名称が使われていることが多くみられます。
芸北地方の、サンバイを祀る「花田植」・芸備地方の大山信仰を背景とした「供養田植」は、この大田植の中でそれぞれの特徴を表わした名称で、いくらか研究者的な視点の入った、新しい言い方と思われます。
また、「囃し田」というのは囃しを伴う田植のことで、行事性を持つ「大田植」との比較として、作業的なもののみを指していう場合もありますが、単純に「田囃を伴った田植」として考えるならば、作業的なもの・行事的なものの両方を表しても間違いではありません。