平成24年4月08日 日曜日
田んぼの肥料となる焼土を作るため、山へ枝木をとりにいきました。
この枝木のことを「ヤバ」といい、それをとりに行くことを「ヤバをコる」「ヤバコリに行く」といいます。
あらかじめ伐っておいた乾いた枝と、伐ったばかりの生の枝を用意しました。
昨年落としておいた枝を小さく切っている様子。
荷車にヤバの束を積んで運ぶ様子。
山からとってきた枝を田んぼの中で円く積み上げ、その上から田の土をかぶせて燃やし、焼土をつくります。これをクグシといいます。
数日かけてゆっくり焼かれた土は田んぼに肥料として鋤きこまれます。
焼いている途中で雨が降りそうになったら、ワラボウトという雨除けを被せます。
乾いた枝を積んだ上に生の枝をのせます。
その上に土をかぶせます。
数日間かけてゆっくり土を焼きます。
種をまき苗を成長させる為の土台を苗代といいます。
田んぼの一部分に、短冊状の枠を引き、枠の外側には溝を、内側には土を盛り上げて、揚床式苗代作りを行いました。
田んぼに短冊形の枠を引き、周りに溝を作っています。
枠の内側に土を盛り上げている様子。
苗代の全体像。
桶に水を張り、生卵が浮く濃度まで塩または硫安を入れ、種籾の善し悪しをはかります。
浮いてきた種籾は取り除き、沈んだままの種籾のみ苗用に使用します。
桶に水をはり、硫安を入れている様子。
ざるに種籾を入れたものを、水につけ種籾をかき混ぜます。
浮いてきた種籾を取り除く様子。
桶に水を張り、網袋に入れた種籾をつけて発芽を促します。
沈んでいた種籾を水につけている様子。
平成24年4月10日 火曜日
ワラボウトとは、クグシの雨よけに使用するものです。
六把程度の藁を束ねて、放射状に開き、火の消えたクグシにかぶせます。
藁を束ねている様子。
出来上がったワラボウト。
クグシに乗せる際は下の藁をほどきます。
クグシに藁をかけ、その上にワラボウトをかぶせています。
ワラボウトが風で飛ばされないよう、棒と石で固定します。
ダイゴエとは駄屋の敷き藁のことで、ダイゴエと堆肥を四角く交互に積み重ね、発酵したものを田に鋤き込んで肥料として使います。
ただ積み重ねたままにしていると、発酵の進み具合に違いが出るので、上部と下部を入れ替える作業をします。
この度行った作業は、堆肥の位置を変える必要があったため、移動時にダイゴオイコとオイコスケを使用しました。
堆肥をダイゴオイコとオイコスケを使って移動させる様子。
ダイゴオイコから堆肥を下している様子。
堆肥を四角く積み直している様子。
堆肥が飛ばないように土をのせています。
ムナクトとは、田んぼの水位を調節するための排水溝のことです。
田んぼの畦に溝をほり、底部分に藁や大きめの石、田んぼの土を敷き、田の水位が一定量を超えると流れ出るようになります。
藁や石で作るほかに、切り取った芝を裏返して敷く場合もあります。芝は根が細かく張るため、泥が流れにくいといいます。
畦に溝を掘っている様子。
底部分に藁や石を敷いている様子。
最後に土をかぶせて完成。
米の藁束でほうきを作りました。
苗代に敷いた油紙に溜まった水分を掃うために使用します。
藁束を2か所ほど縄で縛り、余分な長さは切り取ります。
藁束の締まりを良くするために、藁束の中央に差し込む棒を準備している様子。
枝など強度のある棒を用意します。
平成24年4月29日 日曜日
本来、常温の水(10℃くらい)に10日間・五右衛門風呂の残り湯(30℃くらい)に2日間入れて発芽を促しますが、
今回は水に10日間ほど入れ、その後育苗センターで発芽を調整しました。
発芽した種籾。小さな芽が出ています。
出来上がったクグシにかかっているワラボウトを取り除き、焼け残った枝木や石を取り出しながらほぐします。
ハデを組み立てて、トオシ(フルイ)をぶら下げ、クグシをふるいます。
クグシは、肥料として、苗代の種まきに使います。
ハデ木を組んでトオシを設置し、ふるいにかける準備をします。
ワラボウトを外し、焼け残った枝木や石を取り除いている様子。
クグシをふるいにかけています。
出来上がったクグシ。
苗代の表面を平らに整え、発芽した種籾を蒔きます。
種籾を蒔いたら、肥料としてのクグシ・保温のためのクンタン(乾いた籾殻を焼いたもの)を種籾を覆うように撒きます。
さらにその上に保温のための油紙をかけ、紐をジグザグに張り、風に飛ばされたり、スズメなどに食べられないようにします。
苗代の表面を平らにしている様子。
種籾を蒔いています。
クグシで覆います。
クンタンをかぶせます。
油紙をかけ、端に泥を置き、固定させます。
苗代へジグザグに紐を張っている様子。
水をはった苗代です。
荒おこし前に、畦の塗り直しをするため、畦表面を鍬で切り取ります。
鍬で畦を切り取り、なだらかに整えていま。
牛にスキをつけ、田んぼを耕します。
今年は、美土里町の杉原牧場の協力で、花田植にも出演している『はつきたもん』という雌牛に作業してもらいました。
左へ動かす時は「アッセ」、止める時は「バ」と言うと、牛はその通りに動きます。
耕し始めました。
昔通りに、後ろから一人で牛を追って作業を進めます。
左列が『かつきたもん』が耕した部分です。
トラクターに見劣りしない、綺麗な出来となりました。
平成24年5月7日 月曜日
種籾が数センチ成長したところで、油紙を外し、苗を覆うくらいの水を張ります。
また、テグスやスズメオドシ(光るテープ)を苗代の周りや上部に張り巡らせ苗を鳥から守ります。
今回は上記の作業に合わせて、本来は種まきの段階で行う畦つけと、藁ほうきで油紙上の水を掃う作業を記録しました。
油紙の上に溜まった水を藁ほうきで掃っています。
油紙を取り除く様子。
5~10cm程に育った苗です。
水を張るために畦つけをします。
今回は低い位置にスズメオドシ、高い位置にテグスを張りました。
苗代に水を張った状態で、田植まで苗を成長させます。
平成24年5月19日 土曜日
荒おこしで牛が耕せなかった部分を鍬で耕します。
前回荒おこしで耕していない部分を又鍬で耕しています。
畦に生えている草を鎌でかります。
今回は田んぼ脇の用水路の水を使って砥石で鎌を研ぎました。
砥石で鎌を研いでいる様子。
研いだ鎌で畦の草を刈っています。
堆肥撒きは牛が踏み込んだ堆肥を、ダイゴオイコに詰め込んで田に運び、肥料として撒くもので、昔は主に夫婦仕事で行われていました。
今回は、ダイゴオイコとオイコスケを使い、堆肥を一畝ごと(目安としては1Rあたりダイゴオイコ4杯分)置き、フォークや手で万遍なく撒きました。
ただし畦際には撒きません。堆肥が邪魔になって畦の泥がずり落ちたり、堆肥に湧いたミミズを狙ってモグラが畦に穴をあけたりするのを防ぐためです。
背負い投げのようにして堆肥を田んぼに置きます。
堆肥を置いていきます。
手やフォークを使って堆肥を撒きます。
堆肥を撒き広げた様子。
荒おこしで作った畝が平らになるよう、牛がスキを使って耕します。
今回は前回同様『はつきたもん』と新たに『はるひさ』に作業してもらいました。
前回の荒おこしの畝を砕いて平らに耕しています。
左側の牛のスキを引いているのは八重西の地域振興会の方です。
畦手前の堆肥が撒いていない土の塊を又鍬で砕いておきます。
次回の畦つけの為に荒い土の塊を砕いています。
平成24年5月22日 火曜日
入水口の整備を行いました。
入水口は田の水入れの際、水が落ちる部分がえぐれないよう、3把分の藁束を1つにまとめたものを入水口前に敷きます。さらに石で重しをし、水が藁や石に当たり分散して田んぼに入るよう調整します。
入水口の法面を削っています。
入水口の下に藁束を差し込み、敷きます。
石で重しをしています。
翌日の荒掻きの為に、田んぼに水を入れます。
用水路の板を外し、水を入れます。
水が入っている様子。
平成24年5月23日 水曜日
牛に馬鍬をつけ、水の入った田んぼで土塊を砕き、平らにならします。
今回は田んぼに水を張っていることから、牛も比較的作業が楽で、前回と同じく『はるひさ』と、『Vしばらぎ116』の若い2頭が作業に参加してくれました。
荒掻き前の田んぼ。
馬鍬で土塊を砕いています。
荒掻き後の土塊もなく平らになった田んぼ。
畦の上部と法面部分の土を鍬で削ります。
前回、くれがえしの時に堆肥を撒かずにおいた土を畦際に寄せ、鍬や足で踏んで泥を練ります。(この作業を八重西地区では“アガタヲネグ”とも言われています。)
練った泥を削った畦に塗ります。
畦に塗る泥は、水を大量に含んでいるため田んぼに流れやすく難しいようで、熟練の技が必要なようです。
畦を削って、田んぼの土を畦際に寄せています。
練った泥を畦に塗っています。
畦に塗った土を鍬で整えています。
平成24年6月6日 水曜日
前回畦つけした畦に、更に田んぼの泥を塗り、鍬で表面を整えます。
畦に豆を植えることも多いので、本畦のことを『マメ畦』とも言います。
これで畦が完成しました。
畦横の田んぼから泥をあげ、畦に塗ります。
平鍬の刃を使い、畦の表面を整えます。
代掻きの前に、馬鍬が入れない田んぼの端の部分を鍬で耕します。
平鍬で田んぼの泥を練ります。
牛に馬鍬をつけて、田んぼの泥をさらに細かくします。
牛で代掻きをした後は、エブリを使って稲が植えやすいよう平らにならします。また、稲のカブや草、泥の塊などを足やエブリの角で砕いたりもします。
代掻きは雨の多い時期に行われ、水の張った田んぼでの作業のため、雨天でも作業を進めます。
作業当日は晴れていましたが、再現として牛を追う人に笠と蓑を着て作業してもらいました。
笠と蓑を着ています。
今回使用した馬鍬。
牛が代掻きをする様子。
牛が代掻きし終わったところを、エブリで均しています。
エブリの角で泥の塊を砕いています。
代掻き後の田んぼ。
平成24年6月10日 日曜日
畦は土地活用のため、小豆と大豆を植えます。
本来、畦の豆植えは本畦後(2番畦後)の畦が柔らかいうちに植えるのですが、今回は畦が固まった後での作業になりました。
畦に木槌で穴をあけ大豆を3粒程度ずつ、畦の外側傾斜部には手で穴をあけ小豆を5粒程度ずつ植えていきました。
小豆はそのまま手で周りの土を集めて埋めますが、大豆はクグシで覆いました。
クグシは田舟や桶・小さめの箕に入れて運ぶのですが、これは田の形状や立地、家によって異なります。
大豆を植える穴を木槌であけています。
小豆を植えています。
大豆の穴にクグシをかぶせています。
まず、集めた苗をくくるための藁(ノバシ・ハシ)を準備します。
押切りで藁の両端を切り落とし、葉などを取り、ハシを作ります。柔らかくするために、苗代の水に浸してから使います。
苗代に育った苗を両手で一掴みずつ集め、根元の泥を洗ってからハシで束ねます。
苗取りは主に女性の仕事とされています。
また、早朝に行うことが多く、冷たい手を温めるために焚き火をすることもあったようです。
押切りで藁束を切りハシを作っているところ。
苗を集めています。
束ねた苗。
田植枠をまっすぐ転がす為に、まず田んぼの真ん中に心綱(しんつな)を張ります。
心綱に田植枠を合わせて田んぼの端まで転がします。戻るときは、最初につけた枠跡の端から1~2枡目の上に田植枠を合わせて、転がしながら戻ります。
田植枠を転がす時は、枠を押す左右の手の力は均等にすることで真っ直ぐと枠を転がすことができます。
また、枠の交差部分は苗を植える目印となるので、踏まないよう気を付けます。
今回も雨天時の設定で、蓑と笠をつけて作業してもらいました。
心綱の上に田植枠を合わせます。
蓑・笠をつけて田植枠を転がしています。
苗を田んぼへ運び、田んぼへ満遍なく投げ入れます。
昔は「苗持ち子ども」などと言って、子どもが苗配りを手伝いました。これを、見学に来ていた近所の子供たちの協力で再現しました。
田植枠の交差する部分へ、発育状況により、苗を3~5本づつ植えていきます。
苗は浅く植えるのが良いとされています。
子供たちが苗を投げ入れています。
このように満遍なく苗を行き渡らせます。
苗を植えている様子。
「コシ」といい、時々腰を伸ばして休憩します。
苗籠で苗を運んでいます。
作業後は用水路で泥を落とします。
田植え後の田んぼ。
田植えが終わり、上半期の田植え作業が終わったので、泥落としを行いました。
朝から八重西地区のご婦人の方々が準備された、シバモチ・チシャモミ・キナコムスビなどを囲みながら、みんなで労を労いました。
左のお皿にシバモチとキナコムスビ。右のお皿がチシャモミです。
泥落としの様子。
平成24年7月8日 日曜日
コグサガマを使って、畦の草を刈ります。
刈った草は牛馬の餌にするため、束ねて持ち帰ります。
コグサガマで草を刈っています。
刈った草を藁で束ねています。
ケラカキとは、オケラなど害虫が畦や稲に害を及ぼさないよう、畦前の泥をかき取ることをいいます。
かいた泥には栄養もあるため、畦に植えた大豆や小豆の苗の根元に泥を盛ります。
畦前の泥をかき、すくい上げています。
泥を大豆の根元に盛っています。
田んぼでの仕事は長時間にわたる為、山で刈ってきたシバ(生木)を背負い暑さをしのぎます。
生木は掌を広げたような枝ぶりの枝を用意します。腰紐を巻き、紐の背面へ枝を差して固定します。
シバ以外の日よけとして、渋団扇や帽子などを用いることもあったようです。
日除けとしてシバを背負っています。
除草は、除草機と手作業で行います。
除草機での作業(『タノクサマクリ』と言う)は、苗と苗の間に除草機を転がし、雑草をひき倒します。
作業の順番としては、まず縦(長い辺)をマクリ、一週間ほどして草が出たら横(短い辺)をマクリ、これを三回ほど繰り返します。
最後に手作業(手取り(テドリ)と言う)で除草機が処理しきれなかった草を取ります。
除草機を運んでいます。
除草機を使っている様子。
田んぼの端まで行くと、進行方向とは逆に除草機を持ちかえ、ひき倒せなかった部分に、転がします。
手取りの除草作業です。昔は、大体その家の婦人が1~2人で行う仕事でした。
取った草を丸めて足で強く踏み田んぼに沈めます。草の処分と肥料を兼ねます。
平成24年8月18日 土曜日
畦に生えてきた草をカマで刈ります。
畦草刈りは月1回、ワンシーズン中に4~5回くらい行います。
草が短すぎるとカマで刈るのが難しいので、手で掴める程度の長さになるのを待って刈ります。
今回は腰に藁束をつけ、刈った草をその藁で束ねるところまでの作業をしました。昔はこの草を持ち帰って飼料として使いました。
畦の草を刈っています。
腰の藁束から藁を取り、刈った草を束ねます。
稲の穂が出る前に、田んぼの水を抜きます。
これは、根をしっかり張らせて稲が倒れるのを防ぐためと、穂がしっかり実るために行います。
田んぼを干す期間は、天気次第ですが15~20日くらいで、ヒビ割れができるくらいまで干しておきます。
田んぼを干した状態です。
稲に混ざって生えてしまったヒエを取ります。
本来は根を抜く方がいいのですが、今回は田んぼの地面が乾いて硬くなっていたため、根元を刈り取りました。
またヒエを取る時期は、稲に花が咲いてから田に入ると花粉が落ちてしまうため、花が咲く前に取った方が良いといいます。
カマでヒエを切っています。
田んぼに生えているヒエです。
稲に穂が出始めると田んぼに水を入れます(「水をあてる」とも言う)。
穂が出てからも水分を与えないと米に濁りが出て質が落ちるためです。この時、水位を高くし過ぎないように注意して管理します。
この後、稲刈りの10日くらい前まで水をあてておきます。
水が入っている様子。